耳鳴り
耳鳴りの定義は「外界からの正常な音刺激がないのに、耳あるいは頭の中に音が感じられる状態」というのが一般的な耳鳴りの定義となります。
その症状というのは、左又は右の耳の近く、あるいは頭の中で何かしらの音が聞こえるというもので、その音は周りの人にはいっさい聞こえず本人だけが聞こえるという特徴があります。我慢できれば鳴っていても生活には支障が無いでしょうが、四六時中音がなっていれば気になって仕方がないでしょうね。それがストレスになってイライラしたり眠れなくなったりして、それが自律神経のバランスを崩しよけいに症状を悪くしてしまうという悪循環も起こります。
では音にはどんな音があるのでしょうか。実際の音は人によって千差万別ですが、代表的なものを挙げると
キーン、チー、ジージー、サー、ゴー、ブーン・・・など。この音も実は本人にしか聞こえないため、実際の音を確認したわけではなく、あくまで本人が感じたままの表現です。人によっては、トラックの音とか、水の流れる音、トンネルに入った感じなどといった表現をする人もいます。
耳鳴りをおおまかに分類するとこうなります。 伝音性耳鳴り・・・低音性(ブーン、ゴー、ザー)断続的なことが多く、比較的治りやすい耳鳴りです。 感音性耳鳴り・・・高音性(キー、チー、キーン)持続的なことが多く、伝音性に比べ治りにくく、時間が掛かります。 疾患性耳鳴り・・・高血圧、貧血、動脈硬化、糖尿病、メニエール氏病、神経症などが原因で起こる耳鳴りで、音は様々、原因疾患の改善が必要。 老人性耳鳴り・・・音は小さいが持続的、完全に治すことは難しい。 耳鳴りはなった人でないと解らないと思いますが、ひどくなると精神的にかなりの苦痛があると言われています。しかし残念ながら現代医学ではまだ治療法がなく、専門の薬がないのが現状です。
漢方では身体の機能を「肝、心、脾、肺、腎」の5つに分けて考えます。これは臓器の名前ではなく、その機能を含めた働きのことです。例えば”肝”というのは、肝臓の働きの他に、自律神経や情緒系も含まれます。それぞれの臓腑の働きが悪くなることで様々な病気が起こります。この中で耳鳴りに関係するのは、”肝”と”脾”と”腎”です。 ”肝”の機能が障害されて起こる耳鳴りの特徴は、音が大きく高い音で、ストレスや高血圧、肝臓病などが主な原因です。この場合は主に肝の気の流れを改善したり、自律神経のバランスを改善したり内熱を鎮める漢方薬がいいでしょう。”脾”の機能が障害されて起こる耳鳴りの特徴は、水の流れる音やトンネルに入ったような低い音で、胃腸障害や、水分代謝の乱れが主な原因です。この場合は、肝の時とは逆に加温したり胃腸機能を補う補薬を中心に水分代謝を整える漢方薬を使います。”腎”の機能が低下して起こる耳鳴りの特徴は、音が小さく持続的で、糖尿病や老化が主な原因です。この場合は、体力や精力を回復させたり、血流を良くし、陰陽平衡を整える漢方薬が必要です。またこれらの症候が重複している場合は、漢方もそれぞれを組み合わせて使用する必要性も出てきます。いずれの場合も耳鳴りの改善には時間が掛かることが多いので根気よく治すことが大切です。
【症例1】
41才 女性 身長155cm 体重50kg
半年前から右耳に耳鳴りを感じるようになった。低い音で、言葉で表現するのが難しい音だが、敢えて表現すればコトコトという音が聞こえる。音は断続的でまったく止まることもある。
普段からストレスを感じ易く、不安感がある。足の冷えはないが、足がむくむ。時々くらくらしためまいがある。胃腸は弱いほうだが、食欲はあり、便秘はない。
舌状:はん大 舌質:淡白 舌苔:白膩
【弁証と経過】
胃腸弱く、水毒があるので、二陳湯をベースにして、コトコトという音は内耳の水滞(むくみ)と判断し、水をさばく効果を期待して半夏を配合した漢方薬を一週間処方した。服用後すぐに音が大きくなったが一週間のみ切った時点で以前より音が小さくなったような気がするとのこと。体調も問題なく、服用の違和感などもないので、同じ内容で1ヶ月分処方。一ヶ月後、耳鳴りは止まっていることが多くなった。さらに一ヶ月、耳鳴りはほとんど気にならなくなった。そういえばここ2ヶ月近くめまいはしていない。さらに一ヶ月、症状に変わりなく、耳鳴りはほとんどしないというので、服用を中断。2週間ほどして来店。ストレスのせいかめまいがするようになった。漢方薬を服用していた間はめまいがなかったので、再度同じものを処方。その後、通常量の半分の量で継続服用中。
カテゴリー:病気・症状に対する漢方,コラム
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